AWARD
学生設計賞

2024.6.19

第21回「集合住宅再生・団地再生・地域再生学生賞」

【作品紹介③優秀賞・講師講評】

志村裕己 東北大学大学院 工学研究科

題名 偏差的日常 ―ズレが育むナナメの関係―


(審査講評)
団地に暮らす人々の多様な関係性のきっかけを建築的に作ろうという意欲作。作者は団地内での家族や世代とは異なる人と人の関係を「ナナメの関係」と位置づけた。
それがどのような場面で生まれているのかを、住民へのヒアリングやアンケートから223のエピソードとして取り出し、建築形態の操作へと変換している。そして、会って他者を確認できるようにするための建築的操作、光や音、匂い、景色などで間接的に他者を感じられるようにするための操作が提案されている。
後者の間接的なコミュニケーションを作るための工夫が既存の団地のグリットから少しだけ角度を振ったナナメのラインだ。この斜めのラインに沿った壁の配置などにより、光や音の反射、視線の抜け、空気の流れなどを繊細にコントロールし、住居に他者や他者と共有しているものや景色などの情報が程よく入ってくるような空間的な工夫が秀逸であった。
多世代が他者の存在を感じ、互いを程よい距離感で思いやりながら暮らす風景が想像できた。

宮部浩幸 (近畿大学建築学部建築学科 教授/SPEAC)