2025.6.23
戦後の住宅不足解消のために作られた東京都新宿区にある戸山団地と戸山公園とその周辺が計画の対象地。その土地は、かつては大規模な緑地で川や池があった。住宅不足解消という役割を終えた団地を緑地として再生し、風景を蘇生しようという提案。この提案の素晴らしさは風景の美しさだけにとどまらない。蘇生した風景がさまざまな効果をもたらしている。
水景を伴う緑地は周辺の緑地とも連携して動物や植物の生態系も再生するだろう。さらにこの緑地はグリーンインフラとして人々の暮らしに潤いを与えながら、水の循環を自然なものに置き換え水害の危険度を下げることにも貢献するだろう。
もう一つの良い点は、戦争に起因する住宅難を乗り越えてきた歴史をしっかりと刻印した新たな風景を提案していることである。団地は解体されるのだが、柱や梁、基礎はその場に残され、ここに団地があった記憶が形として残されている。躯体解体で出るガラまで「団地蛇籠」として風景の構成要素としている。
全国で団地は作られた目的を達して、その次のあり方が問われている。この提案は団地の今後について一つのあり方を示しているといえよう。