2025.6.23
この協会における学生設計賞は、これまで既存団地を活用した再生案が主であったが、本提案は既存団地の建替えを前提とした提案として、初めての受賞となった。従来は既存ストックの活用が評価の前提とされることが多かったが、本提案は、地域の風景や地形、身体感覚に対する繊細な読み取りと、それに基づく空間構成の再編によって、建替え案であるにもかかわらず高く評価され、優秀賞に選出された。
提案者は、「散歩」という日常的で非目的的な行為に着目し、それに伴う感覚的体験を「散歩知」として捉え直している。そして、視線の操作や住まい手のふるまいに着目し、多様な関係性や解釈を許容する空間を建築的に構成している点が評価された。
また、敷地である南馬込の高低差や坂道といった地形的特性を設計に積極的に取り込み、住戸・共用部・公共空間のあいだに「関わりしろ」のある領域を設けることで、住民の主体的な関与や偶発的なふるまいが生まれる可能性を提示している点も高く評価された。